国立職業リハビリテーションセンター

国立職業リハビリテーションセンターは、障害のある方々の職業的自立を支援する日本の先駆的実践機関です。本センターは障害者一人ひとりの特性に合わせた職業リハビリテーションサービスを提供し、社会参加と就労を促進する重要な役割を担っています。

設立背景と基本情報

国立職業リハビリテーションセンターは、昭和54年(1979年)に労働省(現厚生労働省)によって埼玉県所沢市に設置されました。現在は独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が運営しています。このセンターは、「中央広域障害者職業センター」(障害者の雇用の促進等に関する法律に基づく)と「中央障害者職業能力開発校」(職業能力開発促進法に基づく)の二つの機能を併せ持つ施設として設計されています。

施設は敷地面積14,980平方メートル、建物の延面積15,386平方メートルという規模で、昭和52年1月に着工し、昭和54年7月に開所しました。隣接する国立障害者リハビリテーションセンターと連携しながら、障害者の職業的自立に必要な総合的なサービスを提供しています。

センターの特長と独自の支援体制

柔軟な入所システムと個別対応

国立職業リハビリテーションセンターの大きな特徴は、年間を通じて10回の入所機会を設けていることです。これにより、障害者のニーズに応じたタイミングでの入所が可能となり、リハビリテーションの開始時期を柔軟に調整できます。

また、各訓練生に対して障害特性等を把握するための導入訓練を実施し、その結果に基づいて個別の訓練カリキュラムを作成します。こうした一人ひとりの状況に合わせたアプローチにより、効果的な訓練と就職支援が可能となっています。

総合的な職業リハビリテーションサービス

センターでは、障害者職業カウンセラーと職業訓練指導員が連携して、職業評価から就職支援まで一貫したサービスを提供しています。具体的には、以下のようなサービスが含まれます。

  • 障害特性に応じた職業評価、職業指導、就職支援の系統的実施
  • 個別カリキュラムによる職業訓練の実施
  • 障害特性に応じた効果的な技能指導
  • 職業人として必要なビジネスマナーの実践的習得
  • 就労イメージを持つための体験的職場実習と就労活動の一環としての職場実習
  • 健康相談・指導、病院受診に関する相談・指導

対象者と訓練コース

支援対象となる方々

国立職業リハビリテーションセンターの支援対象は、以下のような方々です。

  • 身体障害、高次脳機能障害、または難病のある方(通所が困難な遠隔地の方は隣接する国立障害者リハビリテーションセンターの宿舎を利用可能)
  • 通所可能な精神障害、発達障害、知的障害のある方
  • 疾病や事故などで休職中で職場復帰を目指している方

多様な訓練科目と期間

センターでは、6系統11科の多様な訓練科目を提供しています。

  1. メカトロ系:機械製図科、電子機器科、テクニカルオペレーション科
  2. 建築系:建築設計科
  3. 情報系:OAシステム科、DTP・Web技術科
  4. ビジネス系:経理事務科、OA事務科、オフィスワーク科
  5. 物流系:物流・資材管理科
  6. 職域開発系:アシスタントワーク科

訓練期間は、標準コースが1年間、短期コースが6ヶ月間となっており、復職支援コースについては原則6ヶ月間ですが、復職時期等に応じて柔軟に設定することも可能です。

利用の流れと応募要件

応募要件

国立職業リハビリテーションセンターの利用を希望する方は、以下の要件を満たす必要があります。

  • 週5日通所し、1日6時間程度の職業訓練をコース修了期間まで継続して受講できること
  • 職業訓練の受講および職業的自立を希望していること
  • ハローワークに求職登録しており、センターやハローワークと相談しながら就職を目指す意欲があること

サービス利用の流れ

センターの利用は、以下のような流れで進みます。

  1. 入所準備段階
    • ハローワークでの職業相談・求職登録
    • 地域障害者職業センターでの事前相談(予備評価)
    • 市町村での障害支援区分認定・サービス利用計画作成(必要な場合)
    • 職リハ入所申込書類の送付
  2. 入所から修了まで
    • 職業評価の実施
    • 入所決定会議(入所の可否、訓練コースの決定等)
    • 職業リハビリテーション計画の策定
    • 受講指示・推薦(ハローワーク)
    • 入所・訓練開始
    • 職業訓練と職業指導の実施
    • 中期ケース会議による進捗確認
    • 修了決定会議(フォローアップ方針等)
    • 修了・就職活動
    • 就職後の職場適応支援とフォローアップ

事業主支援と企業連携

国立職業リハビリテーションセンターでは、障害者を雇用する事業主に対しても様々な支援を行っています。

  • 企業の障害者採用計画および雇用管理等についての助言
  • 職場実習を通じた訓練生の状況確認機会の提供
  • 「企業連携職業訓練」の実施(採用・職場定着のための支援)
  • センター内での会社説明会開催支援
  • 障害者採用実績のある企業による講習会の開催など、雇用に関するノウハウの提供
  • 採用日に合わせた訓練修了日の調整
  • 採用後のフォローアップ(地域障害者職業センター等と連携)

先導的役割と今後の展望

国立職業リハビリテーションセンターは、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構の第4期中期目標(2018年度~2022年度)において、「企業ニーズに的確に対応するとともに、障害者の職域拡大を念頭において、より就職に結びつく職業訓練の実施・指導技法等の開発に努めること」という役割を担っています。

また、先導的な職業訓練実施の成果をもとに、職業訓練内容や指導技法等を他の障害者職業能力開発校等に提供することで、障害者職業訓練全体のレベルアップに貢献しています。