就労継続支援A型事業所とは?
就労継続支援A型事業所は、一般企業等での就労が困難な障害のある方に対して、雇用契約を結びながら就労機会を提供する障害者総合支援法に基づく福祉サービスです。「雇用型」とも呼ばれるこのサービスは、福祉的な支援と一般就労の架け橋となっています。

就労継続支援A型事業所は、障害のある方が雇用契約に基づいて働ける環境を提供します。
このサービスの最大の特徴は、福祉サービスでありながら雇用契約を結ぶため、労働基準法などの労働関係法規が適用される点です。
利用者は障害福祉サービスとしての支援を受けつつ、労働者として就労経験を積むことができます。これにより、一般就労に必要な知識や能力の向上を図ることを目的としています。
厚生労働省の調査によると、令和2年3月時点で全国約7.2万人がA型事業所を利用しており、年々利用者数は増加傾向にあります。
対象者:誰が利用できるのか?
就労継続支援A型事業所を利用できる方は、以下のような条件に当てはまる方です。
- 原則18歳以上65歳未満の方
- 一般企業等で就労することが困難な方
- 以下のいずれかに該当する方:
- 就労移行支援事業所を利用したが一般企業等の雇用に結びつかなかった方
- 特別支援学校を卒業して就職活動をしたが一般企業等に就職できなかった方
- 一般企業等での就労経験があるが、現在雇用関係がない方
注目すべき点として、障害者手帳を持っていない方でも、医師の診断や自治体の判断により利用が認められる場合があります。ただし、その場合は「障害福祉サービス受給者証」が必要となります。
多様な仕事内容:実際にどんな仕事をするのか?
就労継続支援A型事業所で行われる仕事は事業所によって多岐にわたります。一般的に精神的・肉体的負荷の少ない仕事が中心となっています。具体的な例としては、
- データ入力やExcelを使った事務作業
- 商品の梱包・発送作業
- Web制作・運用アシスタント
- インターネットオークション用写真撮影
- カフェやレストランでの接客・調理
- 工業部品の加工
- 農作業
- 清掃業務(ホテルやビル、アパートなど)
- パンやクッキーの製造
- 衣類のクリーニング
こうした多様な仕事の中から、利用者の適性や能力に合った仕事を選ぶことができます。また、近年では在宅勤務が可能なA型事業所も増えています。
給料と労働条件:どのくらいの収入が得られるのか?
就労継続支援A型事業所では、雇用契約を結ぶため最低賃金以上の給料が保障されています。厚生労働省の調査による平均給料は以下の通りです。
- 令和3年度の全国平均:月額81,654円、時間給926円
- 令和2年度と比べると月額2,020円、時間額27円の増加
労働時間については、一般雇用と比較して短く設定されていることが多く、1日4~6時間程度であることが一般的です。週20時間以上勤務する場合は、雇用保険や労災保険などの労働保険に加入することが可能です。
給料の支払い方法も事業所によって異なり、「1日いくら」という定額制の場合もあれば、「1作業いくら」という出来高制の場合もあります。
利用料と手続き:どうやって利用するのか?
就労継続支援A型事業所を利用するためには、障害福祉サービスであるため利用料が発生する場合があります。利用料の自己負担額は原則1割ですが、以下のような場合は自己負担がない、または軽減されることがあります。
- 生活保護を受給している世帯の方
- 市町村民税が非課税の世帯の方
利用を希望する場合の手続きは以下の通りです。
- ハローワークでA型事業所の紹介を受ける
- 医療機関を通じて紹介してもらう
- インターネットなどで事業所を探す
- 市区町村の障害福祉担当窓口に相談する
- 興味のある事業所を見学・体験する
実際に利用する前に、仕事内容や事業所の雰囲気、給料などを確認することが重要です。
就労継続支援B型との違いは?
就労継続支援A型と似たサービスとして就労継続支援B型がありますが、主な違いは以下の通りです。
項目 | 就労継続支援A型 | 就労継続支援B型 |
---|---|---|
雇用契約 | あり | なし |
給料 | 最低賃金以上の給料 | 工賃(最低賃金に満たない場合もある) |
最低定員 | 10名 | 20名 |
利用者数 | 約7.2万人 | 約26.9万人 |
労働関係法規 | 適用あり | 適用なし |
B型と比較すると、A型の方が一般就労に近い形態であるといえます。
最近の動向と課題は?
就労継続支援A型事業所をめぐる最近の動向としては、令和6年度報酬改定で経営面の評価が厳しくなり、令和6年3月から7月までに300を超えるA型事業所が閉鎖し、利用者が解雇されるという事態が発生しています。
これを受けて厚生労働省は、A型事業所の廃止時における利用者支援について自治体に通知し、継続的なサービス提供を確保するための対応を整理しました。
また、2025年をめどに「就労選択支援」という新たなサービスが創設される予定であり、利用者の希望に合わせた適切な就労支援サービスの選択が可能になることが期待されています。
まとめ
就労継続支援A型事業所は、一般企業での就労が困難な障害のある方が、適切な支援を受けながら雇用契約に基づいて働ける場所です。福祉サービスでありながら労働者としての権利が保障され、最低賃金以上の給料を得ることができます。
多様な仕事内容から自分に合った仕事を選べることや、一般就労よりも短い労働時間で働けることなど、障害のある方の就労を支援するための様々な工夫がなされています。
一般就労への橋渡しとしての役割も持ちながら、継続的に就労できる場としても機能しており、障害のある方の社会参加と経済的自立を支える重要なサービスとなっています。
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